最後の証人 柚月裕子 kindle
巻末の解説が今野敏さん、ということで今野さんファンにとっては、今野さんが評価する女性作家ということでも興味がわきそうな一冊です。
物語は法廷もので、湯月さんが大藪賞の受賞前、まだそんなに有名でなかった頃に発表された一冊です。
壮絶な家族愛の物語
法廷ものと言えば、状況は完全にクロの容疑者をどう弁護していくのか、が見どころなのですが、この一冊は、実はとても壮絶な家族愛の物語として読んでしまいました。母親は愛する息子のためにここまでできるものなのか、そして夫(父親)になげかける言葉「私たちは同志よ」にとても心を動かされていまいます。愛する夫(確かに夫をとても愛していた妻でした)に向かって「人間の絆で一番強いものは何か、って聞かれたら同志って答えるわ。恋愛感情や友情より同じ目的を持つ同志の絆が一番強いと思う」って語りかける妻の言葉に、どうしようもなく感動してしまいます。
以前に読んだ「孤狼の血」も壮絶な物語でしたが、この最後の証人もまた壮絶です。
ネタバレになるので、詳しくは書けないのですが、家族愛とともに、柚月さんは読者に対してある仕掛けをしています。読者は柚月さんの思惑にず~っとはまって、この物語の本当の姿をず~っと誤解しながら読み進むはめになります。
そして後半で暴かれる真実!見事などんでん返し!
家族愛に感動した涙目で、思わずチクショ~って叫んでいました!笑