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雪炎 馳星周 集英社文庫

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久しぶりの馳星周さんです。デビュー作の「夜光虫」は衝撃的でした。文体からは堂場瞬一さんと同じ印象を受けました。主人公目線でストーリーが展開していき、主人公の気持ちが抑え気味ってところが、プ~タロには読みやすいんでしょうね。

主人公は元公安の警察官。組織を飛び出して今は細々と農業を営みながら父親の形見の引退した競走馬と暮らしています。ストーリーは、北海道の南の街の市長選を舞台に展開していきます。元公安が、原発反対派の共産党系の弁護士の立候補を手伝うことになります。2人は同級生なのですが、同じ同級生の女性の殺人事件、対立候補の嫌がらせ、そして対立候補を応援する古巣の警察、議員たち との闘いが描かれていきます。馳さんの作品らしいのは、味方と信じていた人物から裏切られ、明らかに敵側なのに心が通いあい、そして圧倒的な暴力の表現。気を緩めて読んではいけない1冊ですが、グイグイ引き込まれて一気に読んでしまいました。

この作品の一番のヒーローで、一番の存在感が光っているのは、元競走馬の「ガイウス・ユリウス・カエサル」ではないでしょうか? 馬なんですが、とにかくクールで偉そうで賢くてカッコイイ! 作品に登場してくる女性たちが全員ファンになってしまうのもうなづける感じです。

予定調和じゃないのがハードボイルドと気づかさせてくれる1冊。ガイウス・ユリウス・カエサルに会ってみたい。

普段、警察もの、ミステリーばかり読んでいると、この作品の結末に少し違和感を覚えます。こんな終わり方では、主人公はこの後、とんでもないトラブルに巻き込まれてしまうんじゃないかと、心配になってしまいます。しかし、すべてが予定調和で解決する終わり方もきらいじゃありませんが、この作品のように不安定さを残したままの終わり方もハードボイルドならではで楽しめます。