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奇跡の人 原田マハ 双葉文庫

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あの有名な「奇跡の人」ヘレン・ケラーさんの実話をベースにした、ヘレン・ケラー青森版です。話の大筋はヘレン・ケラー物語とほぼ同じ。最後に「水」「water!」と叫ぶところも同じです。登場人物の名前もサリバン先生は去場安(さりばあん」とヘレン・ケラーが介良れん(けら(へ)れん)となっています。どなたも小さい頃に読んだことがあるでしょうから、なんだ、知っているお話、と思ってはいけません。

原田さんの物語には、もう一人「狼野キワ」という青森の旅芸人が登場します。生まれつき視力がなく、津軽地方の旅芸人の師匠に預けられ、家々を回って三味線と歌を披露し食料やお金をもらって歩くボサマという人たちだそうです。あの津軽三味線の荒々しくて物悲しい音色は、こういう人たちが伝承してきて生まれたのかもしれません。このキワとれんの友情が、この物語のもう一つのストーリーとなっています。この物語では、れんとキワの短かった同居生活から約70年後に、キワを重要無形文化材に指定しようとするエピソードから始まります。

れんと安の物語も実話をベースにしているのなら、キワも実在の人物がモデルなのでは?と思い調べてみましたが、青森の旅芸人が指定された事実はみつかりませんでした。新潟・長岡で「最後の瞽女」と言われた小林ハルさんという方が指定されていました。原田さんは、この人を取り上げたかったのではないでしょうか? この「奇跡の人」では、れんとキワの友情がれんに奇跡を起こし、2人の関係性がこの物語を最後までひっぱってくれています。2人の友情は、原田さんの作品に、ヘレン・ケラー物語には無い魅力を与えてくれました。