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誤断 堂場瞬一 中公文庫

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プ~トロは堂場瞬一ファンです。数々の警察ものシリーズは(多分)全作読んでいます。この作品も「新しい警察ものシリーズかな?」くらいの気持ちで手に取ったのですが、ちょっと違いました。若いサラリーマンが主人公で、彼が社命と人間としての正義との間で揺れ動く葛藤を描いた作品でした。結果は、面白い!おススメです!

様々なテーマ・視点で楽しめる一冊です!

ある製薬会社の製造した薬が原因で死亡事故が起きます。会社は隠蔽工作を主人公に命じます。彼は疑問に感じながらも隠蔽工作を遂行します。そして悩む彼の前に新たな薬禍事件が姿を現します。それは40年前の大事故が原因の公害である可能性が高いのですが、40年前も会社は事故による被害を隠蔽し、新たな事件も隠蔽しようとするのです。会社の方針を前に主人公は正義を取るか、社命に従って出世を取るか、悩みます。新たな事件をめぐる田舎の被害者たちと隠蔽しようとする会社側の闘いがこの物語のメインストーリーとして展開します。

企業の公器としての社会的責任がこの作品のテーマだと思いますが、読み方によっては様々なテーマ・視点で楽しむことができる作品です。

「家族の関係性」・・一族が創業した会社のために個人の事情は犠牲にしなければいけないのか?

「東京と故郷」・・東京で成功を収めた男にとって故郷に残った友人たちはどういう存在なのか?

プ~トロの出身地は、有名な公害病を抱えていた県であり、隣町には世界規模の大企業がある漁師町でもあり、さらに自分は親の介護のために頻繁に地元に帰り古い友人たちとたびたび会ったり相談したりしていたので、この作品の舞台設定がとても身近に感じられてしょうがありまませんでした。生まれ育った街にも確かに「浜」と「山」ではないけれど、「浜」と「商店街」の格差は感じていました。

メインテーマは「会社か個人か」

そして、メインテーマ、「会社か個人か」・・会社の利害と個人の信念が相反するとき、人間は信念を貫き通せるのか? 自分だったらどうするのか?については、非常に興味深く読ませていただきました。こちらも身近に感じられるテーマでしたし・・。笑
この作品で一番印象に残っているキャラクターは、「大社長」なんです。大社長について最初は謎が多かったのですが、少しずつ解き明かされていくにつれ、共感もでき、反発も感じてしまいました。一つの企業を一代で大きくした人物にはそれなりに強力な行動原理があり、全てが正しい行動をしていたわけではないということを改めて感じさせてくれたような気がします。(物語の中の人物ですけどね)
余談ですが、髙藤弁護士が使っている小物は、堂場さんの「男の一理」に登場する物ばかりではないのですが、「男の一理」の続きを読んでいるようです。

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30万もする皮のイス、珈琲に対するこだわり、プジョーに関する描写など、堂場さんが高藤の姿を借りて言わせているようです。

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